オリーブオイルは、古くから「果実の女王」と呼ばれているのを知っていますか?
神聖な樹木として崇められてきたオリーブは、イタリアやギリシャなど地中海沿岸の人にとって、最も身近な油の源であり、日常生活、とくに食卓にはなくてはならない料理の名わき役を果たしてきました。
今回は、悪玉コレストロールを減らすオリーブオイルは心筋梗塞の予防に有効なお話しをご紹介します。
オリーブオイルの歴史
古代ギリシャの詩人ホメロスに
「黄金の液体」とまでいわせた
オリーブオイルは、
現代人にとっても動脈硬化を予防する油として再び注目され、オリーブオイルを油脂として使う地中海式食事法に関心が高まっています。
オリーブオイルは
オリーブの果実からしぼりとった
油性の「ジュース」で、数ある植物油のなかでもしぼったまま利用できる唯一の油です。
オイル(油)oilの語源も、オリーブ(olive)からきています。
疾病がオリーブオイルの料理で差が生れた
古代から地中海文化の偉大な媒体であったオリーブオイルに関心が集まり始めたのは、米国や北欧の人々に、肉や動物性脂肪を摂取しすぎたための疾病が目立ち始めた1950年代にさかのぼります。
地中海沿岸諸国では
欧米や米国に比べて、当時から問題になっていた心血管障害(冠状動脈硬化症や狭心症や心筋梗塞などの原因となる)の発症が3分の1以下であるという疫学調査が出されました。
さらに、地中海式料理でとる油は、オリーブオイルや魚の油が中心で、不飽和脂肪が多く、一方、北欧や米国でとる脂肪はバターや肉の脂が中心で、飽和脂肪が多くを占めていたのです。
バターや肉の脂が多いと悪玉LDLコレステロール値を上昇させる
この飽和脂肪のとりすぎが
心血管障害の大きな危険因子である血液中の悪玉のLDLコレステロール値を上昇させます。
雑穀や魚、野菜を多くとり
油脂としてオリーブオイルを使う地中海諸国の食生活を、経済的に貧しいためと認識してきた人々には大きなショックでした。
オリーブオイルの成分を分析してみると、ほかの植物油と同じように不飽和脂肪酸がその成分の多くを占めています。
一般に、飽和脂肪酸が多い脂肪は、牛脂、バターなどのように固体で、不飽和脂肪酸が多い植物油は液体です。
オレイン酸を多く占めるオリーブオイルの効果とは
オリーブオイルに含まれる不飽和脂肪酸は一価不飽和であるオレイン酸が多くを占めているという成分上の特徴があります。
オレイン酸が主体のオリーブオイルが
どうして動脈硬化を抑えるのかについてさかんに研究され、
その結果、
①動脈硬化を促進させる悪玉のLDLコレステロールの血中レベルを低下させるが、動脈硬化を抑える善玉のHDLコレステロールを低下させない。
②動脈硬化の原因である過酸化脂肪の生成を抑制する。
ということが明らかになってきました。
つまリオリーブオイルは動脈を硬化から二重に守るというわけです。
①の作用はオリーブオイルの主成分であるオレイン酸によるものです。
このオレイン酸の分子構造は、コンステロール値を上昇させる飽和脂肪酸のステリアン酸と同じ18個の炭素数を持っています。
両者の違いは、構造式の上で、炭素原子が水素原子で満たされていない二重結合が一つ(一価不飽和)あるという点だけですが、オレイン酸には、動脈硬化を促すLDLコレステロール値を下げる働きがあります。
サフラワー油などに多く含まれるリノール酸にも、LDLコレステロール値を下げる作用はありますが、リノール酸はHDLコレステロール値をへらしてしまうというマイナス面を持っています。
②の作用は、オリーブオイルは脂肪酸のほかに、ビタミンEをはじめとした抗酸化物質を、多量に含んでいることによるものです。
この抗酸化物質は酸化しやすい生体を、酸化から防御するのに役立っています。
生体の構成成分が酸化されると、さまざまな悪影響が人体に引き起こされます。
動脈硬化やガンの発生に、酸化の担い手である活性酸素が最近とくに注目されています。
たとえば、酸化されたLDLコレステロールは、アテローム動脈硬化症(動脈の内壁におかゆのような性状の固まりができる動脈硬化)の病巣形成に深く関与しているという事実が確認されています。
動脈硬化についてはこちらもご覧ください
オリーブオイルは酸化も起こりにくい油
オレイン酸は不飽和脂肪酸ではありますが、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸と比べ酸化されにくく、そのうえオリーブオイルは抗酸化物質を多く含んでいます。
そのため、生体にとって不都合な過酸化物質の生成を抑えるという面で、多価不飽和脂肪酸を多く含むサフラワー油、ヒマワリ油といった植物油に比べて有利です。
健康に対しての油のとり方はこちらもご覧ください
オリーブオイルを料理レシピに
オリーブオイルのこうした特性は、加熱して料理に使うさいに生かされます。
多価不飽和脂肪酸の含有量の多い植物油に比べて、加熱による物理化学的変化が少なく、酸化現象も起こりにくいのです。
加熱によって煙が出る温度も多価不飽和脂肪酸の含有量の多い植物油より高く、加熱に対して安定した油であるといえ、加熱して料理しても安心な油なのです。
オリーブオイルでもう一つ強調しておきたいことは、植物油の多くは種子油で、種子に化学的な処理を加えて抽雌しますが、オリーブオイルは基本的にはオリーブの実をしぼるだけのシンプルで自然な操作で作られていることです。
そのためオリーブオイルには自然な風味があり、それを生かして、そのまま生でパンやサラダにかけて楽しめます。
オリーブオイルはカロリーが低く健康促進に良い
油(脂質)は1gが9キロカロリーで、糖質、たんはく質の2倍以上の熱量です。
そのため成人病を防ぐ食事では、その摂取量を極力抑えることにだけ注意がいってしまう傾向にありますが、健康の増進には油のとり方もたいへん重要なのです。
オリーブオイルの最大消費国イタリアでの家庭料理は、穀類(パン、パスタ)、豆類、緑黄色野菜、魚、肉をバランスよく食べる、自然の素材が生きるマンマ(母親)の味なのです。
オリーブオイルはこうした食生活とともにあってこそ、現代人の理想的な油脂としての真価が発揮できるのです。
ちなみに私自身も、毎朝パンにオリーブオイルをつけて食べるなど、食生活にオリーブオイルをとり入れています。
オリーブオイルのある暮らしで健康イキイキ!『オリーブハート』
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