血液ドロドロが非常に怖い「perokun」です。
「脳梗塞」というと、脳卒中発作、意識障害、片マヒ、言語障害などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
確かに、大きな脳梗塞が重要な部位にできれば、これらの症状が起こります。
しかし、こういう症状を起こさない、小さな脳梗塞もあるのです。
30歳代の人にも隠れ脳梗塞がいる
なかでも最近注目されているのが、ごく小さく、ほとんど自覚症状を起こさない脳梗塞です。
この場合の脳梗塞は13ミリ以下で、微小脳梗塞(ラクネ梗塞)と呼ばれます。たいていは二つ以上、ときには数十個もみられるのが特徴です。
自覚症状がない「無症候性脳梗塞」
微小脳梗塞の大部分は、これといった自覚症状が出ない「無症候性脳梗塞」(むしょうこうせいのうこうそく)として起こります
(完全な無症状でなくても、軽いめまいや頭痛など、日常にありふれた症状しかみられない場合、事実上、無症候性脳梗塞に含まれる場合もあります)。
このように小さくて明確な症状を現さない、いわば「かくれ脳梗塞」が、かなり多くの人に見られることが、ここ20年ほどで明らかになってきました。
これは、脳の検査機器である「MRI(磁気共鳴断層撮影)が普及したためです。
1970年代には、脳や内臓の内部の状態を知るため、CT(X線断層撮影装置)が盛んに用いられました。しかし、CTでは1cm以下の脳梗塞は見つけ出せません。無症候性脳梗塞の大部分は見逃されてしまいます。
これに対して、1980年代から普及してきたMRIは5mm以上、性能がよければ3mmの脳梗塞まで診断できます。現在はもっと小さいのも可能となりつつあります。
その結果、本人もまったく知らないうちに進んでいる無症候性脳梗塞が、意外と多いことがわかってきたのです。
たとえば、CTで見ると、疑おうと思えばあやしげな部分はあるものの、おおむね正常です。CTだけでの診断なら、「心配ありません」という結果になることが多かったのです。
ところが、MRIで見ると脳の中に小さな白い部分が、いくつもダンゴ状になっているのです。これが微小脳梗塞です。
CTならわからない異常が、MRIならここまでわかるのです。
無症候性脳梗塞が発生する割合
無症候性脳梗塞の発生率については、いろいろな調査があります。
少なめのデータでも、無症状で検査を受けた人のうち
30歳代で1~2%
40歳代で5%
50歳代で8%
60歳代で18%
70歳代で32%
80歳代でそれ以上にみられたという結果が出ています。
調査によっては、この倍くらいの数字が出る場合も多いのです。また、どんな調査でも、40歳以降から急にふえ始める点では一致しています。
これといった症状がないからと、無症候性脳梗塞を軽く見てはいけません。
この種の脳梗塞が、とくに40~50歳代の人に見られるということは、やがて大きな脳梗塞を起こす危険が高いという注意信号です。
大きな脳梗塞を起こすと、冒頭でふれた脳卒中、片マヒ、言語障害などの重大な症状が現れます。
また、大きな障害を起こさなくても、小さな脳梗塞がどんどんふえた場合、脳血管性痴果(のうけっかんせいちほう)を起こしやすくなります。
早期発見すればボケ・痴呆は防げる!
一般に、10~20年前には、年を取るとある程度ボケるのは当たり前ととらえられていました。
現在では、その全部が自然の老化現象ではなく、加齢に伴う無症候性脳梗塞の増加とも深く関係すると考えられています。
前もって無症候性脳梗塞の存在を知り、適切な対策を講じれば、防げるボケ(脳血管性痴果)も多いわけです。
脳梗塞を起こしやすい人とは
高血圧、糖尿病、高脂血症(高コンステロールや高中性脂肪)、喫煙といった要素を持つ人は、無症候性脳梗塞が生じやすいことがわかっています。
親御さんが脳梗塞を起こした人も要注意です。
脳梗塞を起こしやすい体質や、食事の好み、生活習慣などは、子供に受け継がれることが多いからです。
「心房細動(しんぼうさいどう)」と呼ばれる不整脈がある人、心弁膜症(しんべんまくしょう)を持っている人も注意が必要です。
これらの疾患があると、心臓の血管内にできた血液のかたまりが脳に移動して、脳梗塞(脳塞栓)を起こしやすいからです。
絶えず血液のかたまりが脳のほうへ移動し、無症候性脳梗塞を作りやすいこともわかっています。
これらの要素がある人、あるいは軽くても原因不明のめまい、手足のしびれ、頭痛、頭重、記憶の衰えなどがある人は、早めに脳ドックなどで検査を受けましょう。
おわりに
なにも危険な要素や症状がなくても、40歳を過ぎたら、一度は脳ドックを受けた方が良いと考えます。
男性の42歳は厄年とされていますが、それをきっかけに受けるのもよいでしょう。
無症候性脳梗塞は、男性のほうが多いものの、女性にも少なくありません。女性も、40歳代のうちに、機会を見つけて脳ドックを受けてください。
無症候性脳梗塞が見つかったら、まず前述の要因をできるだけへらします。
高血圧や糖尿病はきちんと治療し、喫煙者は禁煙します。同時に、必要に応じて、血栓を防ぐ薬や脳の血行をよくする薬などを用います。
日常生活では、塩分や脂肪分を控え、ストレスをうまく避けることが大切です。
これらに気をつけていけば、「かくれ脳梗塞」があっても、大きな脳梗塞発作やボケの危険性は低く抑えられます。
検査機器の発達により、いまや脳梗塞は非常に見つけやすくなりました。その恩恵を活かして、私にもいえる事ですが、ぜひ無症候性脳梗塞を早期に発見し、ふやさない努力をしていきましょう。