おもに頭部外傷をきっかけに起こる慢性硬膜下血腫の罹患者が増えています。
高齢者やアルコール多飲者に多く、年間発生頻度は10万人に1~2人といわれていましたが、最新の調査では70~79歳で76.5人、80歳以上で127.1人と急増しています。
今回は、脳外科で治せる認知症「慢性硬膜下血種」についてお話しします。
転倒し「ボケ」「もの忘れ」があり認知症?
実家の近所に住むAさん(仮名前)は
ハイキングが趣味で、雨の中、足をすべらせ転倒、後頭部に傷を負って病院を受診されました。
頭部CTによる画像検査を受けましたが、異常は認められませんでした。
しかしその2カ月後
「もの忘れ』『おかしな言動』のため再度受診されました。
「朝ご飯はまだか」「何言ってんの、さっき食べたでしょ!」。
「最近何だか、いつもボーっとしてて、認知症じゃないかしら」といった状態です。
ボケ・物忘れ対策についてはこちらもご覧ください
両側慢性硬膜下血腫と診断
頭部検査の結果は『両側慢性硬膜下血腫』でした。
両側性といって
脳の左右に血腫ができるタイプで
このような場合は麻痺症状はほとんど見られず、もの忘れや意識の低下など意識状態に変化が起こりやすくなります。
慢性硬膜下血腫の症状で
気づきやすいのが『片麻痺』で
脳の右側に血種ができると右の脳が圧迫され、左の手や足が動きにくくなる、
脳の左側に血腫ができれば右手足が麻痺する、
といった症状ですが、両側性は症状に気づかれにくく、「アルツハイマー型認知症』と診断されることもあります。
硬膜下血腫は
頭部を転倒などによりぶつけた後頭蓋骨と
すぐ下の硬膜と脳(くも膜)とのすき間で
徐々に出血して血液がたまり
血腫ができる病気で、頭をぶつけて多くは3週間から2カ月後に発症します。
血腫のできるメカニズムは以下のように考えられています。
・外傷をきっかけに硬膜と脳の間に被膜ができる。
・被膜にできた新生血管(新たに発生する異常な血管)からじわじわと血液がしみだし、たまって血腫となる。
大きな血腫になるまで時間がかかるため、症状がでるのもゆっくりです。
慢性硬膜下血腫は
「穿頭(せんとう)血腫ドレナージ術」
という外科治療が一般的です。
頭部に局所麻酔をして頭蓋骨に小さな子し(あな)を開ける。
そして被膜の中にチューブの先を入れ、もう一方を体外に出しておく。
するとたまつていた血液が少しずつ外に出てきて血腫が小さくなる。
血腫による脳の圧迫がなくなれば症状は改善します。
Aさんも手術を行いました。
両方で30分ほどの手術でした。
認知症と思われた症状は劇的に改善し
1週間で退院、2カ月後には趣味のハイキングを再開されました。
「認知症』の中には脳外科で治せるものもあります。
おわりに
外傷による慢性硬膜下血腫で認知症に似た症状がでることもあります。
アルツハイマー型認知症と診断されることもあるのです。
治療で改善が見られるので心当たりのある方は相談に行くべきでしょう。
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